孤独な君へ5のお題
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1 放って置いてくれ、係わるな
実際こんな風に拒絶されたのは初めてのことで、正直、驚いた。
「構わないで、ください。好い加減。」
もごもごと聞き取りにくい小さな声は、それでも確かに拒絶を表していた。
「わかった。」
でもなんでそんなこと言われなきゃなんないのさ。
「もうナカジに構うのはやめるよ。」
すこし、ほっとしたような表情。本当に小さな変化しか見せないナカジの表情がやっと分かるようになったのに。
「だからさ、今度はナカジかおれに構って。」
「…は。」
「自分の言い分だけ通そうなんて、ずるいよ。」
微かに眉をひそめる表情も、呆れたように溜め息をつくのも、
「…もう、いいです。」
すきなんだ、放っとくことなんか出来ない。
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2 隣に居てもいいだろうか?
そんなこと今更訊かない。
駄目って言われるのがオチだし。
それにいま、追い返されないのをいい方に解釈してるとこ。
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3 他人に俺が理解出来る筈がない
人間は、他人の気持ちを理解することなんか出来ないと言う。何故ならそれは、当たり前に、他人の脳味噌と自分の脳味噌が繋がってないから。人間が自分の気持ちを全部とは言わないまでも理解出来てるのは、その気持ちを持ってるのが自分の心や脳味噌、つまり自分のものだから。自分と繋がるものだから。
「ナカジはおれの気持ち分かる?」
「他人は、理解できない。逆に、他人も、おれを、理解できない。」
「なんで?」
「自分は、確固とした一個。自分は、他人じゃない。干渉されないし、干渉、しない。」
「ナカジ、おれのこと、すきでしょ?」
「……?」
「だから、ナカジとおれ、一個。ナカジの気持ち、分かるもん、おれ。」
「…分かって、ない、です。」
「分かるよ。」
無理やりに繋いだ手を掲げて、
「繋がってるから。」
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4 独りになりたがるのは失うのが怖いから
失ったことなんか、ないくせにと、笑うもうひとりの自分。
だから、尚更、怖いのかもしれないと、目を閉じて思う。
本当は、全然、怖くなんかないのかもしれないと、目を開けて思う。
別れは、未知。
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5 君を置いて逝ったりしない
「…どこへ。」
「遠いとことか、あっちとか、どこへも。おれ、ずっとナカジの傍にいる。」
「…結構です。」
「じゃあいいよ、ナカジはおれの傍にいなくて。」
「……。」
「それでもおれはナカジの傍にいるから。死んでも傍にいる。」
「…タローさん、日本語、分かりますか。」
(051012 |